2004.10.06 [神流湖 太田部橋]



この太田部橋の架かる神流湖は、利根川支流神流川中流部に建設された 下久保ダム(昭和43年/1968年竣工、群馬県鬼石町/埼玉県神泉村)によっ て出来たダム湖です。

下久保ダムは洪水調整・上水道・工業用水・発電などの多目的ダムです が、実際は高度経済成長以来の急激な人口増加により、年々需要が増加 してきた首都圏の都市用水・工業用水の安定供給にウェイトが置かれて います。いわゆる、「首都圏の水がめ」の一つです。因みに、東京都の 水源は約80%を利根川水系に依存しているそうです。

下久保ダム建設によって、下流部では大きな恩恵を受けた一方、建設地 である群馬県鬼石町(旧美原村)大字保美濃山、大字坂原、大字譲原、下久保 の一部、万場町の一部、及び埼玉県神泉村・吉田町の一部が水没することになり、 建設に伴う水没世帯数は321世帯に及びました。 これは、利根川水系のダム建設の中では最大だそうです。

そして、現在群馬県長野原町の吾妻川に建設計画の進む八ツ場ダムは 川原湯温泉をはじめとした5地区、340世帯と45haの農地、学校、国道 145号線の一部、JR吾妻線の一部などが水没することになる大ダムです。 このダムも首都圏への都市用水の供給が主な目的です。

当初住民は反対派、一部推進派、中立派に別れ、ダム建設による対立は様々 な地域の混乱を招いたそうですが、約50年にも及ぶ反対運動に疲れ、徐 々に反対派から脱落、現在は生活再建に向けた協議が続いています。 ただ、本当にダム建設を認めている住民はいないでしょう…。

ダム建設では、水没に伴う生活空間の狭小化、地域コミュニティの解体、 経済基盤喪失に伴う人口流出、長期に及ぶ計画や国の切り崩しなどによる 精神的苦痛など様々な問題が生まれてきました。我々都市住民の生活がこのよ うな山村地域の犠牲の上に成り立っていることを忘れてはなりません。




西野寿章著『山村地域開発論』
東京都水道局
下久保ダムHP
利根川ダム統合管理事務所

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